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オアシスを使った作品のページから。オアシスは、削ったり切ったりが楽であるうえ、指で押してへこませることも簡単。多様な表現が可能だ
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toyoda氏が小→中と勤務しているため、小学生の作品も中学生の作品も見られるという点も、このサイトの“お得”なところだ。
同じアクリル絵の具を使った題材で、小学生なら
http://www.hpmix.com/home/herumuto/E27.htm 、中学生なら http://www.hpmix.com/home/herumuto/A33_1.htm
といった具合。
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左:アクリル絵の具による小学生の作品のページから。 |
生徒の作品がたくさん掲載されているが、プライバシーへの配慮は怠らない。
生徒からサイトに載せる許可を得、次に学級通信で掲載を報告し、不都合がある場合は申し出てほしいと書き添える。
生徒の顔・個人名は出さない。作品と、氏のコメントで成り立っているため、個人の特定は不可能だ。
現在のところ、作品が掲載された子ども達は、全員が喜んでいるとのこと。
子どものプライバシーについては、サイトを運営している教育関係者なら誰でも悩むところだが、基本3原則(1)本人の許可を得る、(2)保護者に報告する、(3)個人の特定はできないようにする――をきっちり踏まえていれば大丈夫(「大丈夫」どころか、喜ばれる!)といういい例だろう。
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右:同じくアクリル絵の具による中学生の作品のページから。やはり思春期を迎えると表現も違ってくる?
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■たくさんの反響は教師冥利
絵の具で絵を描く・粘土や木で立体物を作る、といった、ごくごく一般的な実践とは一線を画すtoyoda氏の指導。「友だちの顔を描く」というポピュラーなテーマでも、鉛筆を一度に2本持たせ、あえてきっちり描かせないようにする。
身近な素材を使うのは、
「あまりお金をかけることなく、しかも身近なもので、図工や芸術の素晴らしさに気が付いてもらえたら」
という願いがあるから。
氏は、新鮮な題材を使うことで、子どもがどんどん図工好きになっていく手ごたえを感じるという。
このサイトを作ったのも、そうした経験の蓄積を発信したい、その情報を少しでも役立ててほしい、と思ったことがきっかけだとか。
実際、氏のサイトには、研究授業の相談や、経験が浅い教員からの相談がよくあるそうだが、中を見れば一目瞭然、うなずけるというものだ。
また、指導する立場の教員だけでなく、実際に制作に当たる側である学生からの反響も。
「留学先の選択授業でアートを取ったものの、何を作っていいか分からなかったので、参考にしました」という海外からの反響もあった。
さらに、ある県の教育センターから、「CDに落として全県の学校に配布したい」というメールが来たことも。
氏も、こういった数々の反響に喜びを隠さない。
「自分の題材に興味を持ってもらい、いろいろ質問が来たり、活用してもらえたりすることは、大変な喜びです。人のためになる職業を選んだわけですから、これも教師冥利です。とにかく人の役に立つことほど嬉しいことはありません」
■自由な発想で生きる力を
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「見たこともない動物を描こう」というテーマで発想指導しつつ、「鉛筆一本でもグラデーションをつけるとこんなに色が出せるんだよ」という点も同時に教えている
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toyoda氏の目標とする授業は、「児童が既成概念にとらわれず、思うがままに発想し、自己表現を楽しむ活動」(サイトより)だ。
「柔軟な思考から自分なりの考えを導き出すことは、そう、“生きる力”の育成にもつながるんです」(同)
朝自習の15分間を利用したイメージトレーニング「見たこともない動物を描こう」のページを見ると、ユニークな作品が勢ぞろい。描いた子どもたちに、それぞれの動物の生態を聞いてみたくなる。
上手に描けたとかそういうことよりも、この発想の豊かさにこそ氏の指導の成果が現れていると言えるだろう。
氏は日々の生活の中でも“発想”を大事にしている。その指導については、「発想指導」のページ( http://www.hpmix.com/home/herumuto/E22.htm
)に詳しい。
「自由」と「発想」を大事にするtoyoda氏の理念とともに、いくつかの実践が紹介されている。
柔軟な発想のために(=生きる力の育成のために)、どんなことが大切で、どんな要素が重要か、簡潔にまとまっているページだ。
「児童の小さな気づきにも耳を傾け、受け入れてあげる環境がとても大切」等、教員(図工・美術を担当しているか否かに関わらず)はもちろん、子どもに関わる人にはすべからく読んでほしいヒントが満載だ。
つづく
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