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Helpfulnotes記者探訪記

  【特集】教師の心の病-前編

  病む教師達の「気づき」


東京メンタルヘルス・アカデミー所長:
臨床心理士・武藤清栄先生

プロフィール:
 武藤 清栄(むとうせいえい) 東京メンタルヘルス・アカデミー所長。
  1951年秋田県生まれ。国立公衆衛生院衛生教育学科卒業(専攻:健康教育およびメンタルヘルス)。

  心とからだの相談センター主任カウンセラー(セクシャリティおよびマリッジカウンセリング)、サンシャイン医学教育研究所カウンセラー(医学生のカウンセリング)、医療法人梨香会秋元病院精神科

心理療法担当を経て、現在東京メンタルヘルス・アカデミー所長。臨床心理士。日本精神保健社会学会副会長。
 著書に、『職場のメンタルヘルスQ&A』(日本法令)、他多数。


◎急増する教師の心の病。Helpfulnotes記者が友人の休職をきっかけに取材した。

皆さんはじめまして!
このコーナーではhelpfulnotesの記者=通称(うさパン)が、教師の皆さんや塾の先生、その他教育に興味のある方達向けに様々な情報をお届けします!今回は教師のメンタルヘルスなどの専門家、武藤清栄先生を取材しました。

【記者データ】
うさパン:年齢不詳のうさぎ記者。フリーとしては新米だが、雑誌社、編プロ、専門紙新聞社などで修行を積んできた。塩ラーメンが好物。

サヤカの休職

 うさパンの友人で教師をしているサヤカが最近自分は教師に向いていないのではと真剣に悩んでいるという。うつ病を抱え、すでに休職に入っており大変落ち込んでいるそうだ。うさパンは元気づけようとしたが、サヤカからは「放っといてよ!」の一言。教師の職場である教育現場で一体何が起きているのか、うさパンはとても心配になった。
 調べたところ、うつ病など心の病で休職した公立学校教職員の昨年度の数は、過去最多の4178人だったという調査結果が、文部科学省の方から発表されていたことなどがわかった。



「教師」でも感謝されない

 サヤカのこと、helpfulnotesの読者の皆さんのこともあり、うさパンは教師のメンタルヘルスの問題などに詳しい臨床心理士武藤清栄先生へ取材を依頼。先生が所長を務める東京メンタルヘルス・アカデミーのカウンセリングセンターへお邪魔し、お話を聞かせて頂いた。

 同センターは池袋駅から歩いて3分ほどのところにある。メンタルヘルスのプロ武藤先生は聡明な感じで、とても柔らかい感じのしゃべり方をする先生だった。

うさパン教師の心の問題が色々と取沙汰され話題となっていますが、普通の職場のメンタルヘルスの問題と教師のそれとはやはりだいぶ異質なものなのでしょうか?

武藤先生:
やっぱり人間関係が大変な仕事ですよね。対児童生徒、対上司、対同僚、対生徒の父母、対自分の家族、対近所の関係など多くの人間関係をうまくやっていかなければなりません。非常に気を遣う仕事ですし、ましてや「教育者」なわけです。その上、子ども達はほんとうに色々な子がいます。思い通りにならないという意味での「ストレス」が非常にたまりやすい職場と言えます。

うさパンそうですね。ただ一昔前は、教師というと公務員で気楽だなんていう人がいましたが…。

武藤先生:感謝される職業はメンタルヘルスが良いんですよ。「有難う」「先生のおかげです」とか。昔は先生と言うものは周囲の人から感謝されるものだったからメンタルヘルスはそんな悪くなかった。

うさパン
最近は教師も感謝されなくなってしまったんですかね?

武藤先生:そうですね。父母の要求も高くなってきましたし、尊敬の念を持たれなくなってしまいました。あと昔は威厳がある先生が多かったのですが、今は「先生らしく」なく、子どもに甘い先生が増えた気がします。


人間関係の希薄化


うさパン昔は子ども達のほうもしっかりしていたというのもあると思うのですが・・・。

武藤先生:人間関係が非常に「希薄化」してきたというのもあると思います。私が校長・教頭研修の講師を頼まれた先で必ずと言っていいほど聞く話ですが、昔は廊下でA君とB君が喧嘩していたら、通りかかったC君とD君が止めようと介入する姿があったというのです。ところが最近は同じ状況でも、介入する子どもの姿は見られなくなった。そうなると、A君とB君の関係は二人っきりのものとなり、非常に緊張感が走るものとなってしまうのです。これが人間関係の「希薄」なわけですが、「希薄」とは当事者以外の周囲が関心を持たないということですね。今「いじめ」問題など色々とやっていますが、子ども達同士で話し合わないとこれは駄目です。「A、Bどうしてこのようなことをやってしまったんだ」と周囲を含めて話し合えるような状況を親や教師が促進して行く必要があるのです。

うさパンここへ来る教師の方達の相談例としてはどんなものが多いのですか?

武藤先生:そうですね・・・色々ありますが、やっぱり校長・教頭などからは部下である一般教員に対してどう指導していったらいいのかわからないとか、保護者からクレームがきてるとか、不登校の子どもへどう対応すればいいのかとか、一般教員ですと、自分は教師に向いていないんじゃないかとか、辞めたいんだけど辞められないとか、そのほか家庭内の問題など色々とあります。

過去を取り戻す


うさパンそういった悩みを抱える人たちへはどう接していけば良いのですか?

武藤先生:まず話を「聞く」ことが大切です。「ストレス」の水で一杯になった水槽から、悩みを「聞く」ことによりたまった水を抜き、水かさを減らさないといけません。水かさを減らすことによりカタルシス(浄化作用)が生まれ、その後、「気づき」が生まれます。
 例えば、上司である教頭とうまくいかないという一般教員が、自分の父親との確執が原因で教頭を父親と重ね合わせていると「気づく」。どうして同僚や先輩にわからない事を聞けないのか、それは自分に自信がなく、自己価値観(セルフエスティーム)が低い、だから聞けないと気付くわけです。

うさパン気付けばどうしたらいいのかわかるようになるんですか?

武藤先生:どうしてそんな自己価値観が低くなったのか、小さい頃のエピソードを語ってもらいます。そして本当はその時どうしてもらいたかったのか、本当はどう言いたかったのかなどを考えます。この場合、心理療法としてはロールプレイ(*1)エンプティチェア(*2)といったものが効果的です。
  例えば、教頭との折り合いがうまくいかない一般教員の例ですが、ロールプレイを取り入れることにより父親との過去を再現させます。

「息子(相談者):いつも出来の悪い僕よりおにいちゃんの言う事ばかり聞いて・・・」
「父親(実在の当人でなくカウンセラーや相談者自身が演じても良い):お前がそんなことを考えているなんて思わなかったよ」

という感じでロールプレイとして過去できなかった父親との話し合いをさせるわけです。過去と言うのは概念的なもので、あるのはゆらぎだけですから、過去できなかったことを今行なうことによって過去を取り戻す事が出来るわけです。カウンセリングも佳境に入るとこうした作業を取り入れて、なるべくドラマチックにやっていかないとなりません。

-後編へ続く-

 

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【脚 注】--------------------------------------------------------------------------
(*1)  カウンセリングの対象となる場面を想定し、カウンセラーや患者などが役割(role)を演技する(play)心理療法。


(*2)  空の椅子を置いて、そこに相手が座っているとして対話型の心理劇を行なう心理療法。



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